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泌尿器の病気
(前立腺がん)


前立腺とは

男性特有の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにして存在しています。正常ではクルミ大、もしくは栗の実大といわれ、約20gです。前立腺液(精液の一部)を産生し、精子に栄養を与えたり、精子が動きやすくする働きがあります。前立腺の筋肉が尿道に作用して排尿や射精に関与しています。前立腺は大きく分けると内腺(内側の組織)と外腺に分かれ、前立腺がんは外腺から発生することが多いです。

前立腺がんの疫学

前立腺がんは欧米に多く、アメリカ男性の悪性腫瘍では罹患率第1位、死亡率で肺がんに次ぐ第2位です。アメリカ人でも黒人に多く、アジア人には少ないことから、人種が発生に影響していますが、日本人でもハワイ在住の日本人は発生率が多いことより、環境の影響も考えられます。食生活、性活動、ホルモン、遺伝子などが原因に考えられますが、不明な点も多いです。現在日本で最も増えているがんの1つです。

症状

前立腺がんは外腺に発生することが多いことから、早期から排尿症状がでることはほとんどありません。ただ、前立腺肥大症がある方は排尿症状が出ますが、これは前立腺がんの有無とは関係ありません。前立腺がんは骨に転移しやすいことから、腰痛や足の痛みで見つかった結果、すでに転移していることなどもあります。

スクリーニング検査

PSA(前立腺特異抗原)の測定
PSAとは正常前立腺でも作られる成分ですが、正常値は4ng/ml以下です。一般的には前立腺がんの患者さんでは、血液中のPSAの値が上昇します。また、前立腺がんの病勢が強くなっていくとPSAの値も上昇してきます。しかし、グレーゾーン(灰色の領域)といわれるPSAが4〜10の時は、前立腺肥大症や前立腺炎のために上昇している場合があり、その他の検査の総合的な所見で判断します。
直腸診
肛門から指を入れて、直腸の壁を通して前立腺を触ります。大きさや硬さや表面の性状を触診します。
超音波検査
最も簡便な画像検査です。小さな器具(プローべ)をおなかにあてたり、細いプローべを直腸内に挿入して、前立腺を調べる検査です。大きさや形状を観察します。がんがあると黒い塊として分かるときもあります。

前立腺生検

スクリーニングの検査で前立腺がんが疑われたら、実際に組織の一部を採取する検査(生検)をします。麻酔(局所麻酔から腰椎(下半身)麻酔まで様々)をして直腸内から(経直腸的に)採取したり、会陰部(陰嚢と肛門の間)から(経会陰的に)採取したりします。その結果で確定診断が付きます。

画像検査

CT検査
全身への転移がないか、くまなく検査できます。
MRI検査
強力な磁気(磁場)を使って断層像をさまざまな方向から映し出します。造影剤が使えない方にもできる検査ですが、ペースメーカーなど身体に金属を埋め込んでいる方にはできません。前立腺の内部や周囲への拡がりを、詳しく見ることができます。
骨シンチグラフィー
前立腺がんは骨に転移しやすいため、骨への転移がないかを調べるために撮影します。転移があると黒く映ります。年齢による骨の変化や骨折の跡でも黒く映るため、鑑別が必要です。

前立腺がんの進行度

病期A:偶然見つかったがん(前立腺肥大症の手術の際など)
病期B:前立腺内にとどまっているがん
病期C:前立腺の外に出ているが周囲にとどまっているがん
病期D:転移しているがん

治療

(1)手術・・・腹腔鏡下前立腺全摘除術(※この治療は他院への紹介となります。)
腹部にポートと呼ばれる穴を5つあけて、カメラで見ながら器具を操作し、前立腺と精嚢(前立腺に隣接する、精液の一部を作る臓器)を摘除し、残った膀胱と尿道を吻合します。一部の患者さんには開腹で手術を行います。最も問題になる合併症は尿漏れですが、通常数日〜数ヶ月で治ります。また、前立腺のそばに勃起を司る神経が通っており、それらを温存する手術も行われています。手術は出血などを伴うことや前立腺がん自体の増殖スピードが遅いため、一般的に75歳以下を対象としています。
(2)放射線治療(※この治療は他院への紹介となります。)
最近は、CT画像から前立腺の形を見て、前立腺の形に沿って放射線をあてることができ、当院では3次元原体照射法(立体構造に沿って照射する)を施行しています。これは、身体の外から照射する外照射法です。また前立腺の中に放射線性物質を埋め込む内照射法も行っています。合併症として頻尿が約3割に出現しますが、数ヶ月で元通りになることがほとんどです。前立腺に限局したがんであれば手術とほぼ同等の効果です。年齢や持病などで手術が受けられない方にもお勧めできる治療です。また、転移部位の痛みに対して放射線をあてることで、痛みを和らげることができます。 
(3)ホルモン治療
前立腺がんは男性ホルモンの影響を受けて増殖する特性から、種々のホルモン治療が行われています。1〜3ヶ月に1回皮下注射をする方法や内服薬などがあります。また、睾丸を摘出する方法もあります。男性ホルモンを除去する治療なので、男性更年期障害と言われるほてりやイライラ感などが出ることがあります。また、骨が弱くなったり、血流障害をきたすこともあります。しかし、ホルモン治療は徐々に薬が効かなくなってくる(ホルモン治療抵抗性)ため、手術や放射線治療の補助的な治療に用いたり、転移症例であったり、高齢であったりして根治的な治療ができない症例に使うことが多いです。 
(4)経過観察(active surveillance)
増殖スピードの遅い前立腺がんならではですが、高齢の患者さんで、生検の結果がんの悪性度が低かったり、がんが小さいものでは、平均余命を考えると前立腺がんでお亡くなりになる可能性が低いことが考えられます。そのような場合はPSAの値などで経過を観察していくことも治療のひとつです。PSAの上昇傾向が強くなってから治療しても、決して手遅れではありません。不必要な治療を避けるために、しばしば経過観察することが選択されます。

治療効果

がんの種類によっても異なりますが、一般には前立腺内にとどまる病期A、Bは5年生存率(5年間生きられる確率)が約90%以上といわれています。前立腺周囲にとどまる病期Cでは約70%前後、骨転移している症例では約30%と悪くなります。最近は検診で前立腺がんの疑いを見つけて、早期治療を行うようになってきており、治療効果の改善が期待されます。


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医療法人桂水会 岡病院


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